共感性羞恥心とは?感じやすい人の特徴や原因、克服方法を解説

共感性羞恥心とは?

共感性羞恥心(きょうかんせいしゅうちしん)とは、他人が恥ずかしい思いをしていたり、怒られていたりする場面を見ると、関係がないはずなのにまるで自分に起きたことのように感じて辛さや恥ずかしさを感じる心理現象を指します。

別名「共感的羞恥心(きょうかんてきしゅうちしん)」と言われることもあり、英語では「感情移入できる」「共感できる」という意味の『empathic』と、「決まりの悪さ」「困惑」を意味する『embarrassment』を合わせた『empathic embarrassment』と呼ばれます。

共感性羞恥心を抱く具体的なシーンは?

共感性羞恥心は、日常の様々なシーンで体験することがあります。

たとえば、同僚が仕事で大きなミスをして上司に怒られているのを見て、いたたまれなくなったり、友人が恥をかいているのを見て自分も恥ずかしくなって目を背けたり…という経験はないでしょうか。

また現実世界だけでなく、アニメや映画などの創作世界の登場人物の失敗や恥に対しても、いたたまれなさを感じる人もいます。

共感性羞恥心の原因は?

それではなぜ、自分のことではないのに恥ずかしくていたたまれない気持ちになるのでしょうか。

共感性羞恥心の原因について深堀りしていきます。

自分に自信がなく、恥ずかしがり屋

自分に自信がない人や、恥ずかしがり屋の人は普段から人目を気にしているため、恥や叱責されることへの恐怖などに対する感受性が強い傾向があります。

そのため、目に入ってきた他人の恥やミスでさえも自分のことのように反応してしまうのです。

「あの人、私と同じ業務でミスして怒られている。私も同じミスをしてしまったらどうしよう。だんだん自分が怒られているようになってきた…」など、恥を感じるハードルが低いのです。

共感力が高く、感情移入してしまう

共感力が高い人は、他人の気持ちや状況を自分のことのように理解する能力に長けています。

そのため、恥をかいている他人と同じ境遇になった自分の姿がすぐに頭に浮かんでしまい、目の前の他人の感情と自分の感情をリンクさせてしまうのです。

共感力は相手の気持ちを察し円滑なコミュニケーションを取るための有能なスキルですが、共感力が高すぎると感じなくてもいい他人の恥にさえ敏感に感じ取り、無意識に苦しくなってしまうのです。

過去に同じ経験で恥をかいてしまった

過去の恥ずかしい経験がトラウマとなり、共感性羞恥心を引き起こすケースもあります。

自分が経験した同じ恥ずかしい思いを他人がしているのを見ると、過去に恥ずかしい思いをした自分がフラッシュバックし、当時感じた恥ずかしさや辛さを呼び起こしてしまうのです。

この場合は、他人の状況から過去を思い出し、勝手に共感性羞恥心を抱いてしまうことが多いため、他人が恥ずかしいと感じていなくても共感性羞恥心を抱くことがあります。

共感性羞恥心を抱きやすい人の特徴5選

ここからは、共感性羞恥心を感じやすい人の特徴について、詳しく解説していきます。

失敗を恐れている

失敗を恐れている怖がりな人や慎重派の人は、共感性羞恥心を抱きやすい傾向があります。

失敗をして恥をかいたり、怒られたりしないようにいつも気をつけているため、他人の失敗にさえ敏感に感じ取り、共感性羞恥心を引き起こしてしまうのです。

この場合は、他人に嫌われることを恐れる臆病な性格の人だけでなく、他人に情けない姿を見せたくないプライドの高い人や、失敗をした時に過剰に落ち込んでしまう完璧主義者のタイプにも多く見られます。

他人の目が気になる

普段から他人の目を気にしている人も共感性羞恥心を抱きやすいでしょう。

「今あの人の目には自分はどう映っている?」「かっこいい/かわいいと思ってくれているかな」と、他人からの評価をいつも気にしているので、恥や失敗に人一倍敏感になってしまう傾向があります。

こういうタイプの人は、「恥をかくことや失敗すること=格好悪いこと」という認識があります。そのため、プライドが高い人や繊細な人が陥りやすいといえます。

感受性が強くナイーブ

共感性羞恥心を抱きやすい人は、感受性が強く、ナイーブな心の持ち主であることも特徴の1つです。

感受性が強い人は、周囲の人の気持ちや様々なことを敏感に感じやすく、また他人の気持ちを自分のことのように感じて無意識に寄り添ってしまうので、他人の羞恥心にも強く共感してしまうのです。

さらに傷つきやすく繊細な人の場合、一度共感性羞恥心を抱くと人一倍いたたまれなさを感じて、泣きたくなってしまう人もいるでしょう。

周りの人の影響を受けやすい

周囲の気持ちに影響されやすい人も、共感的羞恥心を抱きやすいでしょう。

みんなが笑っていたら楽しくなり、みんなが悲しんでいたら自分には関係がないことでもどんよりと気持ちが暗くなってしまったりすることはありませんか?

そうしたタイプの人は自他境界=自分と他人の境界が曖昧な人が多いため、他人の負の感情も自分のこととして受け止めてしまうのです。

逆に「自分は自分、他人は他人」とドライに割り切っている人は、共感的羞恥心を抱きにくいといえます。

友だちが少なく、交友関係が狭い

共感性羞恥になりやすい人は、自分に自信がなかったり、他人の評価を気にする人が多かったりするため、人付き合いが苦手という傾向があります。

積極的に人と交流する性格ではないため、友だちが少なく、交友関係が狭い人が多いでしょう。

また、付き合う人が多くなると、人目を気にする人はそれだけ周囲の感情に振り回されやすくなります。

そのため、心の平穏のためになるべく他人とは距離を置きたい、もしくは付き合う人を厳選したい人というが少なくないようです。

共感性羞恥心にメリットはある?

共感性羞恥心を抱くと他人の恥ずかしいという思いまで受け取ってしまうので、メリットなんかないと思う人もいるでしょう。

しかし、ここまでご紹介した通り、共感性羞恥心を抱きやすい人は感受性が強いからこそ、他人の気持ちを誰よりも理解でき、寄り添うことができます。

周囲の空気を読む、相手の気持ちを察する、相手の気持ちに共感して一緒に笑ってあげたり泣いたりしてあげられることは、コミュニケーションを円滑に行うために必要不可欠なものなのです。

言い換えれば、高い共感性をうまく活かせば周囲の人から慕われ、信頼を得られやすくなるといえます。

共感性羞恥心を克服するには?

共感性羞恥心にはメリットがあるものの、その感情にうまく向き合えず、悩んでいる人も多いでしょう。

共感性羞恥心を抱きやすい人の克服方法は下記の通りです。1つずつ、ご紹介したいと思います。

  • 自分の感情を客観的にとらえる
  • 自分と他人の感情に線引きをする
  • SNSやネット、テレビから離れる
  • 過去の経験を受け入れ、笑い話にする
  • 人前に出るなど、あえて経験を積む
自分の感情を客観的にとらえる

他人の恥を自分の恥のように感じてしまうのは、物事を主観的にとらえてしまうからです。

他人のことを自分のことのように感じるのとは反対の視点を持ってみましょう。つまり、自分の感情をまるで他人事のように客観的にとらえてみる、ということです。

「あの人が失敗したことは自分の失敗ではない=自分が恥ずかしいと感じる必要はない」といった感じで、まずは状況を客観的に整理して自分と他人を分けて考えられるようになりましょう。

こうした考え方を癖づけていけば、徐々に共感性羞恥心を抱かなくなるはずです。

自分と他人の感情に線引きをする

共感性羞恥心を抱きやすい人は、他人に起こった出来事を自分に起こった出来事のように感じてしまうような自分と他人の境界が曖昧な人が多いです。

つまり、共感性羞恥心を克服するには「他人の出来事」と「自分の出来事」をしっかり分けて認識し、他人の感情と自分の感情に線引きをすることが大切です。

「あの人、すごく怒られている…。でも怒られているのは自分ではないから大丈夫」と、共感性羞恥心を感じそうになったら「自分じゃない」と強く意識してみましょう。

SNSやネット、テレビから離れる

共感性羞恥心は近しい人の失敗や恥だけでなく、会ったこともない赤の他人やアニメやドラマの世界の架空の存在に対しても抱いてしまいます。

SNSでは匿名性を利用して他者を攻撃する投稿もありますし、アニメやドラマなどの架空の世界ではドラマティックな演出のために悲劇なシーンが流れることもよくあります。

つまり、SNSやネット、テレビには共感性羞恥心にとっての地雷が数多く潜んでいて、いつそれに出会ってしまうか分かりません。

そのため、心の平穏が保てない時は、SNSやネット、テレビから離れたり、地雷ワードをフィルタリングしたりするのも1つの手です。

過去の経験を受け入れ、笑い話にする

少し荒療治にはなりますが、過去の黒歴史はあえて笑い話にして会話のネタにするという克服法もあります。

いつも笑顔で楽しそうな人も、能力が高く完璧な人も、誰にでも思い出すと顔から火が出るような恥ずかしい経験があるもの

みんな1つや2つ覚えがあるものなので、周囲の人も失敗談を温かく受け止めてくれるはずです。

逆に「親近感が湧く」と仲が深まることも。

コミュニケーションツールの1つとして何度も話すことで、トラウマではなくなり、恥ずかしい気持ちも薄れていくでしょう。

人前に出るなど、あえて経験を積む

少し勇気が必要になりますが、自分から積極的にいろんな経験をしていくのも共感性羞恥心を克服するのに効果的です。

わざと失敗をする必要はありませんが、どんどん人前に出て恥ずかしさを感じることで、「恥ずかしい」という気持ちが薄れていくでしょう。

人間は同じ感情を抱き続けると慣れ、その感情に対して鈍くなる傾向があります。

恥ずかしさへのハードルが低くなると同時に、うまく切り抜けられたら成功体験として自信をつけることもできます。

共感性羞恥心を受け入れ、うまく付き合おう

共感性羞恥心を抱く原因は色々ありますが、共通して共感性が高かったり、繊細な心を持っていたりする人が多い傾向があります。

それらは別の面で見れば「他者に寄り添う」「気持ちを理解して適切に接する」という、人とのコミュニケーションに欠かせない能力の一種でもあるのです。

そのため無理に克服する必要はありません。とはいえ辛すぎるようであれば今回紹介した克服法を使って少しずつ改善してみてくださいね。

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