香典の正しい書き方や金額相場は?基本的なマナーや注意点を解説

香典とは?

香典とは、故人の霊前にお悔やみの気持ちを込めて供える、線香や抹香、お花の代わりの金銭を指します。

「香」は文字通り「お香」を指し、「典」には「お供えもの」という意味があります。また、「香奠」とも書き、意味は同じです。

通夜後には夜通し遺体を見守る「寝ずの番」という風習があり、昔は寝ずの番でお香やろうそくを絶やさず使っていたため、大量のお香やろうそくが必要でした。

医療が発達していなかった昔は、まれに息を吹き返す者がおり、本当に息を引き取ったのかを確認するために葬儀の朝まで誰かが寄り添うようになったことが寝ずの番の由来だそうです。そのため、昔は故人の縁者や近所の方々が、お香やろうそくを持ち寄り供えていました。

江戸時代に入ると線香がつくられるようになり、不要となったお香の代わりとして金銭を供える風習へと変わっていきました。

また、昔は死は穢れとされ、周囲に感染しないように食料を供えていたことも、香典の風習の由来と言われています。

香典袋の書き方をわかりやすく解説

突然の訃報で、香典が必要になった時、意外と頭を悩ませるのが書き方です。

香典袋には、表書きや名前、金額の書き方に、それぞれマナーがあります。

ここからは、香典袋の書き方について、わかりやすく解説していきます。

表袋(外袋)の書き方

香典の表袋(外袋)には、上段に「表書き」、下段に「名前」を書きます。

まず、表書きとは、香典を贈る名目のことで、名目の名称は供える時期や宗教によって異なります。そのため、外袋を書く前に故人の宗派は何かをまず確認しましょう。

  • 故人の信仰していた宗教が【仏教】の場合
  • 「御霊前」や「御仏前」と書きます。通夜・葬儀に供えるなら「御霊前」、そして四十九日以降は「御仏前」または「御佛前」と書きます。

  • 故人の信仰していた宗教が【神式(神道)】の場合
  • 「御神前」、「御玉串料」、「御榊料」と書きます。

  • 故人の信仰していた宗教が【キリスト教(プロテスタント)】の場合
  • 「御花料」、「献花料」、「弔慰料」と書きます。

故人の宗派が不明の場合や、無宗教の場合は、一般的で汎用性の高い「御霊前」や「御仏前」にしておくと良いでしょう。

下段の名前は、1人で供えるなら自分の氏名を、夫婦など2人で供えるなら夫は氏名、妻はその左に、名字を省略した形で名前のみ書きます。

連名で供える場合は一番右に団体名(会社名)を書き、右から順に目上の人から全員の氏名を書きます。ちなみに、連名は3人までがマナーと言われています。

内袋(中袋)の書き方

内袋とは、中袋や中包みとも呼ばれ、お金を入れる封筒のことを指します。

まず、表面に金額を記入します。金額は数字でなく、旧漢字を使って記入します。たとえば3,000円なら参仟圓、10,000円なら壱萬圓、100,000円なら拾萬圓…となります。

また、金額の先頭には「金」と記入します。「金」と金額の間は空けずに続けて書き、「金●●圓」という表記になります。

裏面には、郵便物の差出人記入のように、左下方に「郵便番号」「住所」「氏名」を書きます。金額も住所氏名もすべて縦書きで記入しましょう。

地域によっては金額を表面に書く場合があるので、事前に近隣の方に聞くか、表面に金額を書くことに気が引ける場合は裏面でも良いでしょう。

なお故人が家族や親しい間柄の場合は中袋を入れない場合もありますが、マナー違反にならないよう基本的には用意したほうが無難です。

香典の金額相場は?

香典で包む金額は、故人との関係性や自身の年齢によって相場が変わります。基本的には個人との関係性が近しいほど高くなり、遠いほど低くなります。

しかし地域の風習や家庭によって相場が異なる場合があります。また、包む金額によって水引も種類も異なりますので、注意しましょう。

  • 香典金額:3,000円から5,000円
  • 故人が近所の方や友人の両親、学校の先生などの場合。
    水引は封筒に印刷されている略式のものを選びましょう。

  • 香典金額:5,000円から1万円
  • 故人が友人や知人、上司、同僚またはその家族の場合。
    また、自身が30代以上であれば故人との関係性に関わらず5,000円以上が妥当です。
    水引は略式のものか、黒白または双銀で水引の本数が7本から10本のものを選びましょう。

  • 香典金額:1万円から3万円
  • 基本的には故人がおじ・おばの場合や、とても親しい友人だった場合。
    また、自身が40代以上であれば故人との関係性に関わらず1万円以上が妥当です。
    水引は黒白または双銀(水引が7本から10本)のものを選びましょう。双銀のほうが金額が高いものになります。

  • 香典金額:3万円から5万円
  • 故人が両親または配偶者の両親、兄弟姉妹の場合。
    また故人がおじ・おばの関係で、自身が40代以上の場合もこの金額が相場です。
    水引は双銀の10本以上のものを選びましょう。

  • 香典金額:10万円以上
  • 自身の年齢を問わず、故人が両親または配偶者の両親の場合。
    水引は双銀の10本以上、不祝儀袋は大判で高級和紙が使われているものが良いでしょう。

香典金額の注意点は?

香典に包む金額は、結婚式のご祝儀と同じく、奇数の金額にするのがマナーです。偶数は割り切れることから、「故人との縁が切れる」とされ、縁起が良くないと言われています。

そのため、3,000円、5,000円、1万円、3万円、5万円の中から選ぶのが一般的です。10万円は偶数ですが、金額が大きいため一般的にマナー違反にはなりません。

なお、1万円を包む場合は5,000円を2枚にすると割り切れるようになってしまうため、1万円札を1枚包みましょう。

同じ奇数でも「9」は「苦」を連想させる縁起の悪い数字と言われているため、遺族の悲しみに配慮する意味でも9,000円は避けましょう。

香典の正しいお札の入れ方は?

香典ではお札の入れ方にもマナーがあります。

まず、入れるお札は普段使っているお札を使います。結婚式や出産のご祝儀には新札を入れますが、弔事の不祝儀に新札を包むと「不幸を予期して準備していた」と捉えられるため、マナー違反となります。

「突然のことで驚き準備する暇がなかった」という心情を表すためにも、普通に使っているお札を包みます。

また、入れるお札の向きにルールはありませんが、中袋の裏にお札の表面がくるように入れるのが一般的です。表面の人物の顔は、お札を出す時に最後に見えるよう、人物が下になるように入れます。

香典の正しい包み方は?

香典は、香典袋のままで渡したり、素手で渡したりするのはマナー違反とされています。そのため、袱紗や布に包んで渡すのが一般的です。袱紗は弔事のみならず冠婚葬祭全般に使えるので、事前に準備しておきましょう。

とはいえ、派手で明るい色はお悔やみごとにはそぐわないため、紫色や藍色、鼠色といった暗くて落ち着いた色味のものがベストです。紫色は慶弔兼用で使えるため、袱紗を1枚用意するなら紫色がおすすめです。

最近では封筒のような形の袱紗が多いですが、布の場合は、まず袱紗を広げて中央からやや右寄りに香典袋の表面を上にして置き、右、下、上、左の順に包んでいって、最後に右側のはみ出した部分を内側に折って包みます。これは弔事用の包み方で、慶事の時は逆に包みます。

香典の渡し方は?

香典の用意が済んだら、次は失礼のない様に正しい方法で遺族に香典を渡しましょう。香典は通夜や葬儀・告別式に持参し、受け付けで記帳する際に渡すケースが一般的です。

まず、袱紗から香典を取り出し、袱紗を畳んで香典袋の下に重ねます。この時、香典袋は自分に対して正面がくるように持ちます。そして香典袋の正面が相手側になるよう回転させ、一言お悔やみの言葉を添えて渡します。

受け付けがない場合は、喪主または遺族に直接手渡しします。渡し方の作法は受け付けでの渡し方と同じで大丈夫です。お悔やみの言葉は簡潔に、小さな声でかけるのがマナーとされています。

他人から香典を預かっている場合は、その旨を伝えた上で同じ作法で渡します。

香典の郵送・送り方は?

香典は基本的には通夜や葬儀・告別式に持参し、遺族または受付時にお渡しするものですが、遠方の方や何らかの事情で赴けない場合は、郵送することも可能です。

現金を郵送することになるので、郵便法に則って現金書留郵便を使いましょう。普通郵便やレターパックは使えませんので注意してください。

現金書留の封筒に香典袋を直接入れ、郵送します。この時、お悔やみの言葉を書いた手紙を添えると、なお喜ばれるでしょう。

現金書留は日時指定が可能なため、できれば通夜の日を指定して斎場宛てに送ると良いでしょう。間に合わない場合は、葬儀の2、3日後を目安に喪主の自宅宛てに郵送します。

なお、まず通夜や葬儀に参列できない場合は、香典の郵送とは別に弔電や供花を手配する心配りも大切です。

香典にまつわるQ&Aを解説

ここからは、香典にまつわるQ&Aについて、詳しく解説していきます。

香典を辞退されている場合は?

最近では遺族が香典の辞退するケースが増えてきています。参列者に負担をかけない心配りや、香典返しの手間をなくす意味で辞退を選ばれることが多いようです。

この場合は、遺族の意向を尊重し、香典の持参を控えましょう。たとえ好意のつもりでも、無理に渡そうとするのは逆に迷惑になる可能性がありますし、他の参列者にも「香典を渡すべきでは」と気つかわせてしまうことになります。

弔意を示したい場合は、香典の代わりに線香やろうそく、供花、供え物のお菓子などを送ると良いでしょう。ただし、それも辞退しているケースもあるので、事前の確認が必要です。

香典は薄墨の毛筆でないとダメ?

一般的に、香典袋には薄墨の毛筆か筆ペンを使って記入します。

薄い色は故人を偲んで悲しんでいる、という気持ちを表しており、くっきりとした墨で書くと元気が良いような印象を受けるため、普通のペンはあまり使われません。

急な弔事に対応できるよう、薄墨の筆ペンは1本用意しておくことをおすすめします。

ただ、近年では慶弔用のスタンプが文具店などで販売されており、これを利用する人もいます。スタンプは簡易なため失礼にあたるのではと心配する方もいると思いますが、一応タブーではありません。

ただ、お相手が年配の方の場合は、やはり薄墨の筆ペンの自筆が喜ばれるでしょう。

香典の中袋は普通のペンでも大丈夫です。

香典の金額は高くても問題ない?

香典の金額は一般的に故人との親しさや自身の年齢によって決めますが、実は高ければ高いほど良いという訳でもありません。

ご祝儀でも内祝いなどがあるように、遺族は香典をもらったら、その金額に見合った香典返しを用意しなくてはいけません。そのため、あまりに高い金額だと香典返しを悩ませることになってしまいます。

相場の金額なら香典返しの種類も豊富にあるため、相場内に収めたほうが喜ばれるでしょう。

また、金額が多いと不幸を喜んでいると捉えられたり、お札が複数あると「不幸が重なる」の忌み言葉になったりと、場合によっては失礼になることもあります。

香典の正しいマナーを身につけよう

通夜や葬儀は、故人と過ごす最後の大切な時間であり、生前の感謝を伝える場でもあります。

故人を敬い、冥福を祈る意味でも、正しいマナーを身につけて失礼のないように心がけましょう。

香典には一般的な作法がありますが、故人の家庭や地域によっては異なる場合もあるので、まずは確認を取って故人・遺族の意向に沿うことが、心のこもったお悔やみにも繋がります。