ミニマリストとは?
ミニマリストとは、自分にとって必要最低限の物、かつ生活の質を維持できる最低限の量だけを所持して生活すること、もしくは、実行する人のことを指します。
ミニマリストという単語は、「minimal(ミニマル)」という英語の「最小限の」を意味する単語から派生した造語で、語尾に人を表す言葉にする接尾辞の「ist」を組み合わせたものです。
物を極限まで減らしてシンプルに暮らす人の意味では、2010年前後からまず海外で広がり、その後、日本でも広がり、使われていくようになりました。
所有物の多さは生活の豊かさとイコールという考え方が一般的ですが、ミニマリストは不要な物を持たないことで代わりに心の豊かさを手に入れることを目指しています。
これの反対語は、マキシマリストです。物を多く持つ人を指しますが、物を捨てられない人ではなく、たくさんの好きな物に囲まれることで豊かさを手に入れることを目指しています。
目次
ミニマリストの考え方とは?
ミニマリストは不要な物を持たない主義ですが、ただ物を極限まで減らしたり、物をバッサリ捨てたりすることを主目的とはしていません。
ミニマリストという言葉が生まれる前、1950年から1960年代に美術分野で最小限まで省略した装飾で完成度を追求する表現スタイル「ミニマリズム」が始まりました。
ミニマリストはこの思想を源流としており、自分にとって不要な物・不要な情報を全て削ぎ落とし、本当に必要な物や好きな物だけで豊かな暮らしを得ることを目的としています。
それゆえ、無駄を省くのは、物だけではありません。
たとえば、SNSやテレビを見る時間を省いて資格勉強などの自分磨きにあてたり、早寝早起きをして朝活をしたりなど、暮らしの全てにおける無駄をなくすことがミニマリストの考え方です。
ミニマリストと断捨離・シンプリストとの違いは?
「不要な物を捨てる」と聞くと、一時期ブームになった「断捨離」という言葉がまず頭に浮かんでくる人が多いのではないでしょうか?
断捨離はミニマリストと混同しやすい言葉なのですが、ミニマリストは物に限らず1日の過ごし方など暮らしの全てにおいての無駄を削ぎ豊かさを手に入れるのに対し、断捨離は不要な物を手放す行為を指します。
ちなみに、断捨離の「断」は「新しい物を断つ」、「捨」は「不要な物を捨てる」、「離」は「物への執着から離れる」という意味が組み合わさっています。
もう1つミニマリストと混同しやすい言葉として「シンプリスト」があります。
シンプリストは物を捨てるのが主ではなく、自分が気に入った物だけを厳選したシンプルな暮らしを送る人のことを指します。
ミニマリストの6つのメリットを解説
ここからは、ミニマリストの6つのメリットについて、具体的に解説していきます。
浪費が抑えられ、節約になる
まず、無駄な物は買わないよう買う物を厳選するようになるため、出費が抑えられて節約に繋がります。
購入した物は本当に必要な物、または、心から気に入った物だけになるので愛着が増し、長く大切に使うようになります。その結果、物持ちが良くなり、買い替えの頻度も減るため、さらに節約に繋がります。
また、厳選する癖がつくと衝動買いもしなくなるため、貯蓄が捗ります。
経済面でとても良い効果があることが、ミニマリスト最大のメリットといえます。
掃除の負担が減り、楽になる
ミニマリストの部屋には必要最低限の物しか置いていないので、とても掃除がしやすくなります。
掃除のたびに物を移動させたり、直したり、また片づけの手間もなくなるので、時短にも繋がります。
後に処分の必要が出てくるような無駄な物もないため、ゴミ捨ての機会も減ります。ゴミの回収が有料の地域では、節約にも繋がります。
掃除に対するストレスが少ないと、掃除が苦ではなくなり、頻繁に行えるようになるでしょう。
また、部屋の見た目が常にスッキリしているため、居心地が良く、急な来客に慌てることもありません。
自分の時間が増える
自宅内が必要最低限かつ最小限の物だけになると、部屋の掃除や片づけ、物を探す時間が省けるため、時短になります。
また、手持ちの服、カバンなども限られるため、コーディネートに迷う時間も少なくなり、朝の忙しい時間に少し余裕が生まれます。
時短して余った時間は、読書や勉強、趣味などの自分の好きな時間にあてることができます。
こうした目に見えない時間のゆとりが、ミニマリストの目指す心の豊かさに繋がっていくのです。
ストレスが減り、心が楽になる
「部屋は心の状態を表す」と言われるように、部屋がスッキリ、きれいに片づいていると、心にも余裕が生まれてきます。そうすると心が乱されることが少なくなり、ストレスが減ります。
また、前述したように物が少ないと片づけや掃除の負担が減るので、そういった面でのストレスからも解放されます。
逆に部屋が物で溢れていて、ごちゃごちゃしているとイライラしやすくなったり、掃除や整理整頓の時間や回数が増えたりして、ストレスが溜まりやすくなります。
自分の好みを把握できる
不要な物を徹底的に削ぐミニマリストは、自分が必要とする物だけを購入するため、じっくり時間をかけて物を厳選するようになります。
そして自分が心から欲しいと思った物を1つ選ぶため、自分の好みや必要とする物の傾向が明確になり、把握しやすくなります。
最初は物を厳選するのに時間がかかるかもしれませんが、何度か繰り返すうちに自分の好みを把握できるようになれば、買うべき物をすぐに見つけられるようになるはずです。
自分の考えを整理しやすくなる
ミニマリストは不要な物や不要な時間、不要な情報を削ぎ落としていくため、とてもシンプルになり、自分の考えが整理しやすくなるというメリットがあります。
何が必要か、不要かの2択ですが、繰り返すうちに自分のことを深堀りする機会が増え、自分の性質や考えが明確になっていきます。
また、視覚的にスッキリしていると物事に集中しやすくなります。そのため、物が少なく片づいている部屋にいると、集中できて頭の回転も速くなります。
ミニマリストのデメリットとは?
一方で、ミニマリストにも、いくつかのデメリットがあるそうです。詳しく解説していきます。
生活の質が落ちてしまう恐れがある
自分にとって必要最低限・最小限の物にだけ絞ると部屋はスッキリしますが、裏を返せば彩りがなくなり、物があるゆえの豊かさや余裕、トキメキといった心の充足も削いでしまうことがあります。
また、ミニマリストを極めるとストックも極力持たないことになりますから、万が一何かがあった時に必要な物がなくなって困る、という事態に陥る可能性があります。
特に災害時や緊急時は命や健康にも関わってくるので、ある程度の備えは必要です。
買い物によるストレス発散ができない
ストレスの発散方法は人それぞれですが、気になった物を買ったり、最新モデルの物を買ったりすることで自分を癒やす人も多いといえます。
しかし、ミニマリストにこだわると「欲しい!」というワクワクする気持ちにストップがかかり、占有する場所や掃除のことなど買った後のリスクが先に頭に浮かんでくるようになって、買い物の楽しさが味わえなくなった、という方もいます。
買い物に出かけても結局何も買わずに帰る、ということも珍しくありません。
一緒に住む家族とのトラブルに繋がりかねない
物の少ないスッキリとした暮らしに慣れてくると、今度は逆にちょっとした散らかりも目につくようになると言われています。
自分1人なら管理も容易ですが、家族と一緒に住んでいる場合、家族が物を出したり、新しい物を買ってきたりすると、気になってイライラしてしまうことも。
「片づけて」「これは捨てなさい」「無駄遣いしないで」と小言が多くなり、ケンカが増えたり、関係がギスギスしたりと、家族トラブルに繋がる恐れがあります。
ミニマリストの始め方を紹介
ミニマリストにおけるメリット・デメリットを解説いたしました。これらを踏まえて、ミニマリストに興味が高まった方に向けて、ミニマリストを始めるうえでのポイントをいくつか紹介していきます。
理想の暮らしを思い描き、自分に必要な物を考える
まず、ミニマリストを目指すなら、必要な物を厳選して、要らない物を捨てる必要があります。
しかし、後先考えずにポイポイ捨ててしまうと後悔したり、結局買い直したりすることもあります。
そのため、まずはどんな暮らしを送りたいのか、理想の環境をイメージしましょう。今の住環境や暮らし方を振り返り、「何が必要か」を考えてください。
ここで大切なのは「要らない物ではなく、必要な物に焦点をあてて考える」ことです。
物理的な処分は後で行うので、まずは自分が暮らしに何を求めているのか、考えをしっかり固めることが大切です。
今持っている物を必要・不必要で選別する
「自分にとって必要な物」のイメージが定まったら、次は今持っている物を「必要な物」「不要な物」で実際に選別していきます。
目についた物から1つずつ判断していくと時間がかかるうえ、何を残したか忘れて同じ物を手に取ってしまうことがあるため、収納している物を一度全て出して視覚的に整理しやすいようにするのがおすすめです。
全て出すと改めて所有物の多さを目の当たりにできるので、処分も捗りやすくなります。また、似たような物を発見しやすくなります。
ただ、1日で部屋の全ての物を選別するのは不可能です。リビング、キッチンなど、エリアごと区切って無理なく進めましょう。
不用品を捨てる、売りに出す
要らない物を選別できたら、次は不用品を思いきって処分しましょう。
バッサリと捨てるのも良いですが、自分にとって不要でも、まだ使えたり、誰かにとっては必要な物だったりするかもしれません。そういったものは、フリマサイトやリサイクルショップを利用するのも1つの手です。
売れれば、まだ使える物を捨てる罪悪感もありませんし、手元にお金も入ってくるので一石二鳥といえます。
ただ、フリマサイトの場合、物によってはなかなか売れないことも。いつか売れるかも…と手元に残しておくと結局、家に物を置き続けることになるので、出品してから1、2ヶ月を目途にして売れない物は処分しましょう。
物が増えていないか、定期的に見直す
真のミニマリストになるには、断捨離してからの行動が最も大切です。
不要な物を捨てただけで満足をしていると、あっという間にリバウンドしてしまうことも。そこで、スッキリ整理整頓した後も、定期的に暮らしを見直して、余計な物が増えていないかチェックし続けましょう。
大きな物は購入する時に吟味するので比較的大丈夫ですが、細かな物は買いやすくてついつい増えてしまうので、気をつけましょう。
物が増えたら、また断捨離をする…を繰り返すと、自ずと買う時点で「本当に必要かどうか」をしっかり考えるようになります。
ミニマリストになるための物の選び方の基準
ミニマリストになるために重要なのが【物の選び方の基準】です。基準を設けないと、物が溢れる生活に逆戻りしかねません。いくつかの物選びのポイントを紹介していきます。
シンプルで使い勝手の良い物を選ぶ
シンプルな物を選ぶと飽きがこず、また、部屋のインテリアや他の物とも合わせやすいので重宝します。幅広く使えるので、それ1つだけで事足りるようになります。
たとえば、お皿なら、白や黒の飾り気のないシンプルなデザインにすれば、和食から洋食、中華まで、いろいろなテイストの料理に使えます。
洋服やカバン、靴、帽子なども、シンプルなデザインと色の物にすれば、どの組み合わせにしても合いやすくなり、結果的に必要な枚数を減らすことができます。
こだわりがあるのなら無理にシンプルに統一する必要はありませんが、凝ったデザインの物は、1、2点に留めていたほうが管理しやすいです。
流行に左右されず、長く使える物を選ぶ
流行りの物って気になりますが、ブームが過ぎると途端に不要になってしまうことが多いのが実情。
結局捨てる未来が見えているのなら、流行に左右されずに長く愛用できる物を選びましょう。
やはり定番の物は飽きも来ず、様々なシーズンを通して違和感なく使えるためおすすめです。
家具であればモノクロでシンプルな物だと失敗しにくいでしょう。こだわりのカラーやデザインがあるなら、統一性を意識するとスッキリ見えます。
また、長く使うことはお財布にも優しいので、耐久性も選ぶポイントにしてみると良いでしょう。
1つで何役もこなせる多用途の物を選ぶ
物を減らす工夫として、1つで何役もこなせる多用途の物を選ぶのもおすすめです。
それ1つで複数のアイテムを買わずに済み、結果的に経済的にもスペース的にも余裕が生まれます。また、1台●役などのアイテムがあると、用途別にアイテムを出し入れしなくて済みます。
今はキッチン器具や文房具などでも多機能を謳うアイテムが増えているので、チェックしてみてください。
洋服だと、オール―シーズン用で売られている物もあります。たとえばシンプルなカラー&デザインの薄手の長袖が1枚あれば、温かい時はそれ1枚で着て、寒い時はアウターを羽織ればOKです。
自分が心から好きな物を選ぶ
ここまで必要最低限に抑えるための物の選び方を解説しましたが、前述したように、もともとミニマリストは断捨離が主目的ではなく、それによってもたらされる心の豊かさや充実した時間を得ることが目的です。
シンプルで耐久性がある物は当然長持ちしやすいですが、あまり心に響かない“好きではない物”ばかりに囲まれていても、心の豊かさは生まれません。
いくら使い勝手が良くても、心がときめかない物は自分には合ってないアイテムなのです。
利便性や汎用性だけでなく、自分が心から欲している物=好みの物を選ぶことも大切にしましょう。
ミニマリストを続けるコツとは?
それでは最後に、ミニマリストを無理なく続けていくコツをご紹介していきます。
物の置き場所を決める
きれいな部屋を継続できるよう、整理整頓しやすくなる工夫を加えると継続性が高まります。
たとえば、「物の“住所”を決める」と各段に片づけやすくなります。
タオルはこの棚、ペンはこの引き出し、など物の収納場所をあらかじめ決めておけば整理整頓しやすくなります。「あるかないか」が一目でわかるので、同じ物を重複して買う心配もなくなります。
また、部屋が散らかる一番の原因は、買った物をどこに置こうか迷って、とりあえず放置することです。物の住所が決まっていれば、買い直した時もどこに置けばいいかわかりやすいので散らかりません。
迷ったら物は買わない
ミニマリストを目指すなら、買い物をする時の判断基準を見直すことが大切です。
節約を考えるならより安い物を選ぶのが正解ですが、不要な物を削ぐミニマリスト的には、値段に飛びついてすぐに購入するのはおすすめしません。
値段よりも、本当に必要か、長く使う気があるのかで判断しましょう。
即断できるほどの魅力がないのなら、「今日は買わない」という癖をつけることも大切です。
また、大きな買い物で迷うなら、レンタル品でお試ししてみるのも1つの手です。一度実際に使ってみたら、自分の必要な物かがわかるはずです。
1つ買ったら、1つは捨てる
物を増やさないようにするコツとして、「1つ買ったら、1つは捨てる」ルールにしてみるのもおすすめです。
物を買ったら、当然その物には“住所”が必要になります。整理整頓してスペースに余裕があるから…を繰り返していたら、結局リバウンドしてしまいます。
新しい物を1つ購入したら、古い物を1つ捨てましょう。
入れ替えする物は、スペース的な観点から同種にしてください。所有する数を一定に保つという意識を持つと、リバウンドしにくくなります。
また「これを買ったら1つ捨てなくてはならない」と意識するようになると、より衝動買いを抑えられるようになります。
自分に合ったミニマリストで心地良い暮らしを
シンプルながらも心にゆとりと豊かさを追求するのが、ミニマリストです。
日々の暮らしが心地良くなりますし、急な来客にも対応でき、メリットがたくさんあります。
しかし、ミニマリストは一朝一夕でなれるわけではありません。
何よりも「自分が本当に必要とする物」を見極めることがまず大切なので、時間をかけ、自分に合ったミニマリストに向けて少しずつ進めていきましょう。